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進め!民族独立行動隊 [ちょっと哲学的]

〈民主〉と〈愛国〉  戦後日本のナショナリズムと公共性


第7章 貧しさと「単一民族」―一九五〇年代のナショナリズム

第1部が戦前、戦中そして小熊英二の分類による第一の戦後(1945~55)までを考察していると考えていいだろう。ただ、その第一の戦後と第二の戦後(1955~90)との分岐にあたる1954年、55年体制が成立してくる過程において、戦後10年間、まさに第一の戦後における日本共産党の活動はかなりに過激なものであったようだ。第2部は、まずこの10年間の共産党の活動を軸として、第8章 国民的歴史運動、第9章 戦後教育と「民族」――教育学者・日教組、で共産党との深い関連において論考が加えられている。それで簡単に、日本共産党(日共)のその10年を追ってみる。
ここで注目されてくるのは、要するに戦中「転向」することなく投獄生活を強いられていた徳田球一宮本顕治が終戦となってGHQにより政治犯として釈放されることだ。ここから戦後10年の日共の怒涛の活動が再開されるのであるが、彼ら二人に欠けていたものは、なんと戦争体験であった。戦中を監獄の中で過ごしているから当然なのだが、これが日共にとって致命的なこととなる。丸山眞男大塚久雄など所謂日共が批判するところの「近代主義者」や「主体性論者」は、自らの戦争体験から戦時中に見出すことのできなかった「利己的享楽の功利主義」を排した「一個独立の人間」を模索するところから始まるのであるが、まるで大東亜戦争がなかったかのごとく戦前より続く20年変わることないマルクス主義理論を基に活動が再開されていたのである。しかし、1945/10 日共幹部が解放されるところから始まったのであるが、国際情勢にも大きく翻弄されることとなる。まず1949/10 ソ連の軍事的支援をもとに、毛沢東が中華人民共和国を樹立することとなる。ちなみに辛亥革命(1911)によって樹立していた中華民国は現在の台湾へ逃げ込むような格好で遷都することとなる。そして、1950/6  朝鮮戦争が勃発する。詳述は省くが、北朝鮮を支援したのもソ連であり、共産主義の猛威にアメリカが焦りだしていたことは間違いない。ソ連はコミンフォルムを通じて日共にも介入していたようであり、この国際的な流れを日共も指標としてしまったことで、早くから共産主義体制の矛盾の中に自ら流されていってしまう。労働者個々人の精神的な独立もないままに、(プロレタリア)階級という集団が革命によって勝ち取るものとは。そうしたマルクス主義的な、しかし実はスターリニズムであったわけなのだが、戦時とは違う全体主義的な様相を日共は現すようになってくる。GHQにより幹部が釈放されたときにはアメリカを解放軍として歓迎していたのではあるが、国際的な共産勢力の脅威から、アメリカが日共に対しても圧力を加えてくるに至ると、当然日共は反米ナショナリズムを標榜してくる。それで党がひとつに結束されていたかというと実に泥沼的な細胞分裂は始まっていた。1947/12 東大細胞分裂事件(雑誌「近代文学」に影響された東大学生党員が分派活動を行ったと非難され、日共が戦後初の大量の除名処分をした事件)、1949/1 衆議院選挙では35議席獲得してはいるものの(定数466議席)、1950/1 コミンフォルム批判への対応めぐり、徳田球一などを中心とした所感派と、宮本顕治ら国際派に内部分裂、主流派となった所感派の主導の下で平和革命路線は放棄、革命に向けた武装闘争にむかっていく。1951/8 コミンフォルムが所感派支持を表明、国際派は査問にかけられ自己否定を強要され、または除名されていった。こうしたことも含め、過激な活動が仇となって1953/4 バカヤロー解散時の選挙では1議席、しかも当選の徳田は北京に亡命しているという結果である。その一月前にソ連ではスターリンが亡くなっている。1953/7/27 朝鮮戦争停戦、10月には徳田が北京で客死している。1955/7 前年54年ごろから方針転換の兆しを見せていた日共は、六全協により武装闘争路線を完全放棄して党内抗争は完全に終止符を打つ。
まさに小熊のいうところの第一の戦後において、日共の怒涛のような政治活動は展開されていたのであるが、この共産党の行動だけからでも国内だけに留まらず、国際情勢をも見通せるとは思うが、それにしても混迷を極めた時代であったようである。朝鮮戦争によって米ソの対立が浮き彫りとなり、長い冷戦体制へと移行していくわけである。



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